もう、夢だけで終わらせない。日本一の夢の祭典「みんなの夢AWARD9」

2019年2月14日

ファイナリストインタビュー特集 VOL.6:木戸 俊介さん

2019年2月25日に舞浜アンフィシアターで開催される「みんなの夢アワード9」。

500人を超える応募者の中から、3次選考を勝ち抜き見事ファイナリストに選ばれた7名はどんな方たちなのでしょうか。

みんなの夢をかなえる会の事務局では、「なぜその事業を行うのか」、
夢の背景にあるファイナリスト達のストーリーを取材しました。

第6回目はNPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト代表の木戸俊介さんをご紹介します。

 

木戸 俊介

「世の中をもっとポジティブでチャレンジングにしたい」

突然の事故

木戸俊介さんが突然の事故で下半身不随となったのは、2015年4月。桜が満開の日だった。

 

小さい頃からサッカーが好きで、全力でボールを追いかけてきた木戸さん。筑波大学入学後もサッカーに打ち込み、インカレで準優勝。卒業後は大手広告代理店に入社し、スポーツ関係の仕事を担当。バリバリ働いていた。

 

後の妻となる彩さんとは、地元の神戸・須磨海岸で出会った。美しく聡明な彩さんに惹かれ、出会って一年後に交際を開始。付き合ってからは3週間で結婚を決めた。

 

1%でも歩ける可能性があるなら

結婚三年目のある朝。彩さんはひと晩連絡なしに帰ってこなかった木戸さんを心配していた。木戸さんの携帯に電話をすると、出たのは警察。木戸さんの意識がなくて命が危ない状態だと告げられる。着の身着のまま病院へ駆けつけると、変わり果てた木戸さんがいた。肋骨10本と肩甲骨が折れ、顔の左半分が粉砕骨折。「この状態で生きているのは奇跡」と医師に言われた。そして、「足だけはもう動かない」という事実を聞かされる。彩さんの頭の中は真っ白になった。

 

だがその事実を知った木戸さんは強かった。医師から歩けないと告げられると、「命を救ってくださってありがとうございました!」と即答していた。そして「1%でも歩けるようになる可能性があるなら、一生リハビリを続ける」と張り切った。

実際は夜ひとりになると不安で泣いたこともあった。家族や友人のお見舞いでモチベーションを保つことができた。「木戸が前向きにリハビリを頑張っていると聞いた」と訪れた友人たちは言い、いつしか「ポジティブモンスター」の異名を授かっていた。

 

オーストラリアでのリハビリで出会ったもの

木戸さんと彩さんはオーストラリアでリハビリに挑戦しようと、東海岸のゴールドコースト周辺で生活を始めた。現地で出会ったリハビリ仲間たちは、誰もがリスペクトできる夢を持ち、ポジティブな空気に溢れていた。

 

例えば元クロスバイクでジャンプを行うプロのライダーだったアンディは、脊髄損傷になった後もリハビリをしながらジャンプをしている。「自分は以前よりもジャンプするのが難しい。だからこそ今の自分はより多くの人を勇気づけることができる」と前向きに語っていたという。

誰もがチャレンジングな目的をもってリハビリに取り組んでいた。彼らと過ごしているうちに木戸さんはますますポジティブになり、何かにチャレンジしていきたいと自然と思うようになっていった。

 

ビーチマットとの出会い

木戸さんは、オーストラリアで「ビーチマット」に出会う。ゴールドコーストの真ん中に引かれているビーチマットを通ると、車椅子でも波打ち際まで行って楽しむことができる。

 

車椅子ユーザーに、当たり前のようにサーファーが手を貸す。そのすぐ隣では若者たちが楽しそうにビーチバレーをしている。日本では見たことのない光景だった。「車椅子で砂浜は渡れない」「車椅子では海を楽しめない」という常識が覆った。

 

帰国後、木戸さんは仲間とともに地元の須磨海岸にビーチマットを導入するプロジェクトを立ち上げる。気づけばたくさんの人たちがプロジェクトに参加していた。

 

「諦めていたことが実現できると、人間はこんなにも感動し、自信がつくのかと車椅子になって改めて実感することができた。できないことをやり方や考え方を変えてどうやって実現するか。前向きに考え続けることで人生はどんどん楽しくなる」それを伝えていきたいと木戸さんは語った。

 

夫婦の夢ノート

事故に遭ってから、木戸さんと彩さんは「夫婦の夢ノート」を作り、夢を書いていた。「スキーでパラリンピックにでる」「大学のメンバーとサッカーをする」など51個の夢が書かれている。その中でまだ叶っていない夢は36個。今回夢アワードの舞台で語る夢、「須磨海岸を世界一のユニバーサルビーチにする」も夢ノートに書いてあった一つだ。

 

「『できない』を『できた!』に変える」を合言葉で夢を叶える。ビーチマットの購入から始めた「須磨ユニバーサルビーチプロジェクト」のテーマはチャレンジとポジティブ。
「夢アワードのファイナリストは、今の自分の位置からは背伸びしている気がします。でもここで負けないように自分を磨いていけば、また一歩上に上がれそうやなと。メラメラしています(笑)」と木戸さん。「須磨海岸で、国籍の違いや障がいのあるなし関係なく、誰もが一切ストレスのない状態で海を楽しめるビーチを作りたい」と言葉に熱が入る。今回の夢アワードで木戸さんは、さらなる夢へのチャレンジを宣言する予定だ。

 

車椅子で良かったと思える人生に

昨年夏に、待望の子どもが生まれた。名前は「太陽」。可愛い男の子だ。

 

夫婦の夢ノートに、「嫁と子どもと並んで歩きたい」も加わった。「車椅子になったことを後悔するのではなく、車椅子で良かったと思えるような人生にしたい」と語る木戸さんは、これからもきっと一つひとつ、ポジティブにチャレンジングに夢を叶えていくのだろう。

(取材:2019年1月 /ライター:教来石沙織)